ある一般産業 機械装置メーカの I 社長と
弊社小川との会話内容抜粋(第10回)です


・・・第9回から続きます


―― 「制御」して物をつくる文化 ――
I 社長 小川社長は、一般産業機械業界は「化石の時代」から、早く脱却 しないと衰退してしまう、とお考えですが・・・




小川
冒頭の話の中で「一般産業機械の基本技 術」は「化石の時代」であるという、刺激的な表現をしましたが、 それば「空圧シリンダ」だけに依存した一般産業機械は近々「近隣諸国」に飲み込まれ、日本の「一般産業機械業界」は衰退してしまうのではないか?  という懸念から出てきたものです。

現に、この現象はユーザを歩いていると、いろいろな分野で見かけられます

評論家的な言い方をすれば

関 係者が危機感をどれ位認識しているか?

という事に大きく関係してくるといえます

というような事を言っても、問題は少しも進展しないと思いますが

少なくとも、我々は「飲み込まれないための技術改善、改良」 の可能性を商品という形で市場に提供し、市場で選択、採用されるように最大限の努力をすることしかやりようはないと考えています

「隣の庭」には上手くいった業界事例(NC工作機、多関節ロボット、等)が あるわけですから、
少し横を見れば、対策・対応方法は簡単に見つかると考えています



I 社長
たしかに言われることは解りますが、現 実は「茹でガエル」状態になっていて、何かおかしい、仕事が減ってき ている、 程度の認識しかない機械メーカの目を覚まさせるためにはどういしたら良いとお考えですか?




小川 「のどの渇 いていない馬に、水を飲ませるのは難しい」と、昔、わたしの父親がよく 言っていました
当時は「そんなものか」くらいにしか、考えていませんでしたが、最近、その意味が実感できるようになりました

我われ弱小メーカに「業界全体の目を覚まさせる」ことなど出来るはずがあり ません
我われの考え、商品を知ってもらい、理解してもらい、購入して頂く、という地道な努力を続けて行く以外に方法はないと思います

一方で「人まね小猿」的なユーザも数多くありますので、リーディング企業の 採用が進めば、一気に市場への普及が進み、 「一般産業機械の改善・改良」が行われるのではないか? という楽観的な期待もしています




I 社長 サーボモータが一般産業機械の動力源として取り入れられる時代 は来ると思いますか?




小川 大変大きなテーマで簡単に申し上げることはできませんが、一つの事例をお話しいた します

我われが出入りさせて頂いている超大手の食品メーカでは、その製造プロセス に「制御」という概念を取り入れることによって、 そのメーカが最重要と考えている「食品の味」が全く変わってくるということに早くから気づき、製造機械の大改革を行っているユーザがあります

この方向性を維持、持続していくなら、このユーザは生き残り、更に、大きく 発展されていくものと信じております
「王道を歩む」 まさにこれを実行されてい ると考えます




I 社長 であるなら、「サーボモータ」が業界に普及するのは難しいこと ではないと考えますが?


小川 とんでもありません
世間一般に「会社を引っ張っている人間は、1〜2%で、あとはぶらさがっているだけ」などと、リーダ群とその他大勢の関係を言いますが、 先ほどの事例は、スーパーマンが居るから出来る事であり、スーパーマンは教育、指導で生まれるものではありません

技術文化として継承できない、または、継承することが難しいことなのだと思 います




I 社長 その企業の例は「突然変異」的なものだと考えているわけですね



小川 残念ながら、そのように思います
「良貨が悪貨を簡単に駆逐してくれる」なら、世の中はとんでもないスピードで改善されていくと思いますが、どうもそうはなっていないようです

しかしながら、その食品メーカが「食品の味」にこだわり続けてもらえるな ら、超大手であるわけですから、 その影響はジワリ、ジワリと周辺に及ぼしてくれるものと期待していますが




I 社長 つまり「制御」して物を作る文化が日本の一般産業機械業界に定 着できるかどうか? が今後の大きな課題であるということですか?



小川 そのとおりだと思います


I 社長 このような本音の話が出来る機会を多く作ることも必要なことと 考えます
また、時間がありましたら、本音を聞かせて下さい



小川 いいえ、こちらこそ
差しさわりのある表現や不適切な表現を勢いに任せて、してしまいましたがお許し下さい

関連業界で生きてきた技術屋の本音をストレートに言わせてもらいました

今後も宜しくお願いします



終わり・・・