あるユーザと小川のアブソリュートセンサについての雑談内容抜粋

「バッテリレス アブソリュート センサ」について(3)
ユーザ 現在主流のABSセンサの「極微小電流の問題」は、ここだけの話しとしますが、深刻ですね
小川
ある不具合発生確率に「目をつぶる」なら、大騒ぎすることはないと思いますが、そうも言っていられない分野があることも事実です
ユーザ どんな分野か、話して頂けますか?
小川 ABSセンサの発祥の地、つまり、自動車生産ラインの分野です。

数年前に、大手ロボットメーカの品質管理部長さんと話す機会が有り、たまたま、本件を話題にしたところ、「なぜそれを知っているのか?」、 「何処で聞いたのか?」となり、それまでの本題は何処かに飛んでしまった事がありました。
私の職歴、推論・・・を説明し、理解してもらいましたが。

その時、
「バックアップ方式のABSセンサはこの原因不明のアラームで困っている」
「要因は接触不良ではないかということで、非公式には話がでているが、公式には影響が大きすぎて誰も認められない」
ということを話されていました。

ユーザ
何か対策は考えられるのですか?
小川 パーフェクトを要求されるなら「有りません」が答えです。

いつものように「限定的で良い」なら可能性はあります。
自然の摂理に逆らって「いけない事」をしたのですから、少しの窮屈さは我慢してもらう必要があります

ユーザ 何を我慢しましょうか?
小川 バックアップの保証期間が1年、2年と言うような長期間仕様をやめるべきではないでしょうか。

これは機器が輸出される場合、日本で3ケ月、船の上で1ケ月、現地の港の倉庫で3ケ月、組み立て、調整3ケ月 と考え、 余裕を持たせると、サーボメーカを出荷してから1年は主電源が通電されないことがあるので、このような長い期間が必要であるということになった経緯があります。

これなどは、現地で組み立て調整を行った時に、全軸原点復帰を「必ず行うこと」とすれば、全く必要のない仕様なわけです。

つまり、バックアップが必要なのは、工場の定期の長期休暇1週間〜10日程度対応可能としておくことで、1年仕様が1週間仕様に変更可能なわけです

ユーザ それが対策になるのですか?

小川 対策になります。つまり同じバッテリを用いて、1年を50週とするなら、50倍大きな電流を流すことが可能になります。

     従来             対策後
10マイクロアンペア →  500マイクロアンペア(0.5 mA)

20マイクロアンペア → 1000マイクロアンペア  (1 mA)

どれくらい信頼性が改善されるかわかりませんが、少なくとも、ある工場単位で、この対策をパイロット的に導入テストし (半年、1年程度 盆と正月の長期休暇後の不具合発生確率の検証)すれば、意味のある、有効な数値が得られると思いますよ

ユーザ
改造の手間はどうでしょうか
小川 センサのバックアップ回路がサーボアンプにある場合は電流制限回路の抵抗を変更する必要がありますのでアンプの改造が必要になります
ユーザ 他に何か方法はありますか?
小川 バックアップ回路がセンサ本体にあり(サーボモータ上)、バックアップのバッテリーが離れたロボットコントローラ上にある場合は、バッテリを機械接点を経由しないように、サーボモータ上に配置換えをやる訳です

ユーザ
追加工事をやらないで、処理できる方法はないですか?
小川 「そんな上手い方法はありません」と言いたいのですが、最後の手があります
ユーザ どんな手ですか?
小川 「定期の長期休暇の後に発生する割合が非常に高い不具合である」ということが十分認識されているわけですから、「保全」の方々に不具合要因の説明、根本対策の難しさを説明し、メーカとユーザ間で白日の下に引き出し、休暇明けのアラームに関しては

「アラーム発生→サーボ機器の交換」の手順に特例を設け、

アラーム発生→コネクタの抜き差しを実施→アラームが停止→正常と見なし、継続使用することです」
この場合、数ヶ月〜1年程度の間にアラーム発生の可能性が考えられますので、微小電流用の接点保護剤・復活剤のようなものを良く評価・厳選して併用することも大変有用な手法です。

参考
エレクトロルーブという輸入品があります。ただこの物はある種のプラスチックに対しては使用不可と言う危険なツールでもあるので、採用には十分な注意が必要です

ユーザ 不具合との付き合い方を検討して、実害のないようにするということですね
小川 ユーザが大手企業の場合、「原理・原則を外れた対策」の採用は非常に難しい訳ですが、ここは無駄な費用をかけないで、実効を挙げる策の採用をお願いしてみる価値はあると考えますが
ユーザ この問題は、誰かに、ボランティアとして技術の整理と方向性のまとめをやってもらう必要があると思いますが、小川さんどうですか?
小川 ゆとりが出来たらやりたいですね
ユーザ ぜひやってください、期待しております
終わり