ある雑誌編集者と弊社小川の対談内容抜粋

空圧文化からの卒業(脱却)が専用機屋さんの課題
その2
編集者 しかし、そのために、この業界では軸のズレを補う部品として「フリージョイント」があるわけで、これは広く使用されていると思いますが?
小川
そのとうりなのですが、じつはここに問題があるわけです。

簡単に言えば

「どれだけ平行度がズレていても、それを補正する事ができる魔法の継ぎ手ではない」

ということです。

当然ですが補正能力には限界があり、それは 「許容偏芯量」 と言う仕様で、明確に規定されています。

「許容偏芯量」の値は、1〜2 mm の物が多いです

編集者 それはあたりまえな事であると思いますが、これで問題がおきますか?
小川
ズバリ 核心の話をします。

問題を起こされる機械屋さんの多くの方は、自分の作った機械の2軸、3軸、つまり、軸間の平行度が 「どれ位の量なのか?」 を把握されていないと思われます。

そして、その機械に 「フリージョイント」 を組み合わせるわけですから、

平行度のズレが「許容偏芯量」以下であれば幸運で、何も問題なく「めでたし、めでたし」

平行度のズレが「許容偏芯量」以上であれば、軸拘束が発生し破損事故→大騒ぎとなります

編集者
機械組立の基本的なところが大騒ぎの要因なのですね
小川 これはかなり「根深い技術的な問題」が関係していると思います。

一般産業機械(専用機)のフレームは通常、組み立て方式で製作されます。

それに対して、工作機械のフレームは、鋳物製で門型の加工機でベッド加工をやっていますが、必要があるからやっているわけです。それは軸の平行度が「命」であるからです。 (それ程高価な工作機械でなくとも、ボールネジに対するガイドの平行度は、1000mm〜2000mmのベッドで 0.1mm 以下)

一般産業機械(専用機)のフレームを製作した場合(後加工無しが普通)、装置サイズが 1000mm を越え 2000mm 〜 3000mm 程度の平行軸を設けた場合、数mm 程度の軸平行度のズレが発生する可能性が考えられます。

これに軸許容偏芯量=1mm〜2mm のフリージョイントを用いた場合、何が起こるか?

機械屋さんは「軸のズレを補正するパーツを使用しているので、平行度が問題になることはない」と考ているようです。(よく聞く話「軸ズレ」の対策はやってある。平行度で問題を起こすことはない)

しかし、現物の機械では軸の拘束が発生することは当然であり、当たり前なことであるわけです。

この大きな認識のズレが問題処理をより複雑にしているのが現実です。
このあたりに気付いて、自社の機械を見直すことにより、今なら。他社に対する技術的な「差別化が明確に出来る」チャンスでもあるわけです。
(使用している間に「ガタ」が大きくなり機械停止等の事故は減少します。)

編集者 だいたいの事柄は理解出来たような気がしますが、何か上手い対策はないのでしょうか?
小川 オーソドックスな手法といたしましては、軸間の平行度調整(走り調整とも言う)を行うことなのですが、機械が出来上がってしまっていると、現実的には難しい修正作業となり、実際は実現不可能となる場合が多いです。

行える次善の策は、ヒロタカ精機などから発売している フローティング・コネクタ (フローティング・ジョイントではありません)を2個直列に繋いで、軸の許容偏芯量を大きくして、機械が持っている軸ズレを補正してやることです。

編集者 2個直列につなぐと2倍の許容偏芯量になりますか?

小川 私どもがユーザ先で経験してきた例を用いて説明します。

不具合事例
軸ズレが 5mm 〜 6mm の機械に対して、許容偏芯量= 2 mm のフローティング・コネクタを使用。軸拘束が発生しトラブル発生

対策
フローティング・コネクタを2個直列に接続し、許容偏芯量= 8 mm

基本はX,Y面での軸補正ですが、
Z軸方向(スラスト方向)の遊び=0.05mm
首振り角度=±10度の影響で許容偏芯量が増加 : 2mm × 2個 → 8mm

を構成し、許容偏芯量内に収め、トラブル解決しました。

― この方法は、メーカの保証値ではありませんので、応急の暫定対策と考え、採用される場合は自己責任でお願いいたします―

編集者
簡単なことではないですか?
小川 いや、これがむずかしいのです。

日常の習慣等にもとづく事柄は、なかなか気がつかないもので、それは「文化」と言っても良いくらい強固なものであると考えております。

以上、お話しさせて頂いたような事を、早く、機械装置屋さんが「常識」として持ってくれるなら、日本の専用機は大きく前進できるような気がしております。

そのようなわけで、私どもは機会あるごとに、様々な資料等を用意してユーザ様の注意を喚起させていただいております。

次は「衝突させての物作りから、コントロールし、ショックレスでの物作り」に関連しての話をさせていただきます。

編集者 また、次回もよろしくお願いいたします。
終わり・・・